お愛想はマナー違反?お愛想の意味や由来をまとめました。
- 「お愛想」ということばの意味
- 「勘定」ということばの意味
- 本来「お愛想」は、「代金」という意味では、使われていない
- 「お愛想」が使われ始めた頃の本来の意味
- 「お愛想」は、お店のことば、お客は「お勘定」
- お寿司屋さんの隠語をやたら使わない
1. 「お愛想」ということばの意味
「お愛想」または「ご愛想」という人もいるようですが、いずれにせよ「愛想」が、基になったことばには、違いありません。
そこで「愛想」を国語辞典で引いてみると、次のようになっています。
- ア)人に対する応対の仕方。好感をもたれる言葉遣い・表情・態度など。「―がいい」「-のないひと」
- イ)人を喜ばせるための言葉や振る舞い。「-を言う」
- ウ)相手に抱いている好意。「-が尽きる」
- エ)特別な心遣い・もてなし・心付けなど。「何の―もございませんで…」
- オ)飲食店などの勘定・勘定書。
最後のオ)の項に、「飲食店などの勘定・勘定書」とありますので、「お愛想、お願いしまあす」は、「お勘定、お願いしまあす」と、同じ意味合いになるので、言葉遣いとしては問題なさそうです。
しかし、これは5項目の意味で、その前には、4項目に渡って別の意味があるわけですから、このまま一件落着とは、いかないようです。
そこで、改めて見てみると、ア)からエ)の項は、似たようなことが書かれています。
これをまとめてみると
「相手をいい気分にさせたり、相手に取り入ったりするためにとる意図的な態度のこと」となりそうです。
だとすると、「お愛想、お願いしまあす」の言葉に込められた「相手」とは、誰になるのでしょうか。
ここは、お寿司屋さんでの支払いの場ですので、登場人物は、お寿司屋さんの大将とお客さんの二者だけです。
ここでの「愛想」とは、お寿司屋の大将をいい気分にさせるためでしょうか、それとも、お客さんをいい気分にさせるためでしょうか。
もし、大将とすると店内を整え、美味しいお寿司を握り、お客さんにいい気分で食べてもらいたいとするのですから、違和感はないようです。
しかし、これをお客さんとすると、大将をいい気分にするために、何をしにお店に来たのでしょうか。
もりもり食べて、売り上げを上げる。
楽しい会話で盛り上げて、はやりの店を演じる片棒を担ぐ役をする。
どう考えても両者ともに、ぴたっと収まりません。
2. 「勘定」ということばの意味
似た意味で使われる「勘定」ということばを国語辞典で調べてみると
- ア)物の数や金銭などを数えること。「人数を―する」
- イ)代金を払うこと。また、その代金。「料理屋の―を済ませる」
- ウ)見積もり。予測。「―外の出来事」
- エ)物事の利害を計算すること。「―が先に立つ人」「損得―」
とあります。
この「勘定」ということばは、平安時代の頃から、すでに、物や金銭を数える意味合いで使われていたと言われています。
それが、江戸時代になると、代金や見積金のことにも「勘定」ということばを使うようになり、用途が広がっていきました。
3. 本来「お愛想」は、「代金」という意味では、使われていない
「愛想」ということばのもつ本来の意味からしても、「勘定」のように、直接「代金」ということばの意味には結びつきません。
反対に、「愛想づかし」ということばがあります。
これを辞書で調べてみると
- ア)好意がもてなくなること。また、その気持ちを表すことばや行為。「―を言う」
と、書かれています。
この意味で使われるのが、本来の「お愛想」ということばの使い方でした。
それが、時代の流れの中で、
少しずつ変化し、代金である勘定を指すことばとしても、使われるようになってきたのだろうと考えられます。
4. 「お愛想」が使われ始めた頃の本来の意味
江戸時代頃は、お寿司屋さんなどの飲食店で、常連の客になると、いざ会計という時に「ツケにしといてくれ」と、代金を付けにしてもらうことが行われていました。
それも、全額を支払うのではなく「じゃあ、これで、あとはツケといてくれ」と、全額は支払わずに、いくらかの金額を残して店を出るのが「粋」とされました。
そんな、文化が広がっていった中で、「すまねえ。
ツケにしないのは、お愛想づかしだけど…」と、残金を残さずに、全額を支払ってしまう際に、お客が口にしたことばなのです。
全額を支払うということは、つまりは、お店を替えるということですから、「愛想づかし」ということばのもつ本来の意味を使った正しい日本語です。
これが、やがて、お店の側からお客さんに対して「どうも愛想がなくて済みません。
お代は…」という、代金を請求する際のへりくだった台詞として言われるようになりました。
これも、ことば本来の意味を逸脱していませんので、正しい日本語の使い方です。
それも、どうも京都あたりを中心に、お店の人が、会計を頼んだお客さんに対して「〇〇さん、ご愛想お願いね」と、帳場の方に声をかけ始めたのが、雑誌で紹介されて、瞬く間に、全国に広がっていったようです。
5. 「お愛想」は、お店のことば、お客は「お勘定」
できればお寿司屋さんのツケ台に座って、「大将、今日のお勧めは」と切り出し、出してもらう美味しい肴をあてに、軽く、大吟醸酒のぬる燗でも飲んで、後は、お任せで、いくつか握ってもらう。
やがて、会計になったら、「お勘定、お願いします」や常連なら「大将、美味しかった、ご馳走さま」で通じます。
指で、バッテンを作るのもさりげない方法です。
「ご馳走さま」が、すっきりしていて、お店への感謝の気持ちも入っているので、よいと思います。
すると大将が、奥に向かって「〇〇さん、お愛想ねぇ」と、叫んでくれます。
お寿司屋さんで「〇〇さん」と、呼ばれるようになりたいものです。
間違っても「大将、お愛想」と言ってはいけません。
「お愛想」は、お店のことばです。
6. お寿司屋さんの隠語をやたら使わない
お寿司屋さんは、ある意味、粋を売り物にしているので、様々な隠語を使っています。
例えば、あまりにもポピュラーな「ねた」は、もともとあったことばのようですが、「たね」を逆さに呼んだ隠語です。
「ガーレジください」などと、したり顔で注文している人がいますが、「シャコ→車庫→ガレージ」の隠語は、お寿司屋さんのものです。
知ったかぶりは、どこかでつまずきます。
誰でも知っている「あがり」も、お酒など飲まない人が、最初から「あがりをお願いします」と、言うと、大将は、「お茶お願いね」と、「あがり」とは、言いません。
これは、「あがり」ということばが、花柳界で、最後に出すお茶「上がり花」から来ている隠語だと理解されているからなのです。
「あがり」は、最後に出すお茶、最初から出る訳がありません。
隠語は、お寿司屋さんに返しましょう。
お愛想はマナー違反?お愛想の意味や由来をまとめました。
1. 「お愛想」ということばの意味
「お愛想」または「ご愛想」という人もいるようですが、いずれにせよ「愛想」が、基になったことばには、違いありません。
そこで「愛想」を国語辞典で引いてみると、次のようになっています。
- ア)人に対する応対の仕方。好感をもたれる言葉遣い・表情・態度など。「―がいい」「-のないひと」
- イ)人を喜ばせるための言葉や振る舞い。「-を言う」
- ウ)相手に抱いている好意。「-が尽きる」
- エ)特別な心遣い・もてなし・心付けなど。「何の―もございませんで…」
- オ)飲食店などの勘定・勘定書。
最後のオ)の項に、「飲食店などの勘定・勘定書」とありますので、「お愛想、お願いしまあす」は、「お勘定、お願いしまあす」と、同じ意味合いになるので、言葉遣いとしては問題なさそうです。
しかし、これは5項目の意味で、その前には、4項目に渡って別の意味があるわけですから、このまま一件落着とは、いかないようです。
そこで、改めて見てみると、ア)からエ)の項は、似たようなことが書かれています。
これをまとめてみると
「相手をいい気分にさせたり、相手に取り入ったりするためにとる意図的な態度のこと」となりそうです。
だとすると、「お愛想、お願いしまあす」の言葉に込められた「相手」とは、誰になるのでしょうか。
ここは、お寿司屋さんでの支払いの場ですので、登場人物は、お寿司屋さんの大将とお客さんの二者だけです。
ここでの「愛想」とは、お寿司屋の大将をいい気分にさせるためでしょうか、それとも、お客さんをいい気分にさせるためでしょうか。
もし、大将とすると店内を整え、美味しいお寿司を握り、お客さんにいい気分で食べてもらいたいとするのですから、違和感はないようです。
しかし、これをお客さんとすると、大将をいい気分にするために、何をしにお店に来たのでしょうか。
もりもり食べて、売り上げを上げる。
楽しい会話で盛り上げて、はやりの店を演じる片棒を担ぐ役をする。
どう考えても両者ともに、ぴたっと収まりません。
2. 「勘定」ということばの意味
似た意味で使われる「勘定」ということばを国語辞典で調べてみると
- ア)物の数や金銭などを数えること。「人数を―する」
- イ)代金を払うこと。また、その代金。「料理屋の―を済ませる」
- ウ)見積もり。予測。「―外の出来事」
- エ)物事の利害を計算すること。「―が先に立つ人」「損得―」
とあります。
この「勘定」ということばは、平安時代の頃から、すでに、物や金銭を数える意味合いで使われていたと言われています。
それが、江戸時代になると、代金や見積金のことにも「勘定」ということばを使うようになり、用途が広がっていきました。
3. 本来「お愛想」は、「代金」という意味では、使われていない
「愛想」ということばのもつ本来の意味からしても、「勘定」のように、直接「代金」ということばの意味には結びつきません。
反対に、「愛想づかし」ということばがあります。
これを辞書で調べてみると
- ア)好意がもてなくなること。また、その気持ちを表すことばや行為。「―を言う」
と、書かれています。
この意味で使われるのが、本来の「お愛想」ということばの使い方でした。
それが、時代の流れの中で、
少しずつ変化し、代金である勘定を指すことばとしても、使われるようになってきたのだろうと考えられます。
4. 「お愛想」が使われ始めた頃の本来の意味
江戸時代頃は、お寿司屋さんなどの飲食店で、常連の客になると、いざ会計という時に「ツケにしといてくれ」と、代金を付けにしてもらうことが行われていました。
それも、全額を支払うのではなく「じゃあ、これで、あとはツケといてくれ」と、全額は支払わずに、いくらかの金額を残して店を出るのが「粋」とされました。
そんな、文化が広がっていった中で、「すまねえ。
ツケにしないのは、お愛想づかしだけど…」と、残金を残さずに、全額を支払ってしまう際に、お客が口にしたことばなのです。
全額を支払うということは、つまりは、お店を替えるということですから、「愛想づかし」ということばのもつ本来の意味を使った正しい日本語です。
これが、やがて、お店の側からお客さんに対して「どうも愛想がなくて済みません。
お代は…」という、代金を請求する際のへりくだった台詞として言われるようになりました。
これも、ことば本来の意味を逸脱していませんので、正しい日本語の使い方です。
それも、どうも京都あたりを中心に、お店の人が、会計を頼んだお客さんに対して「〇〇さん、ご愛想お願いね」と、帳場の方に声をかけ始めたのが、雑誌で紹介されて、瞬く間に、全国に広がっていったようです。
5. 「お愛想」は、お店のことば、お客は「お勘定」
できればお寿司屋さんのツケ台に座って、「大将、今日のお勧めは」と切り出し、出してもらう美味しい肴をあてに、軽く、大吟醸酒のぬる燗でも飲んで、後は、お任せで、いくつか握ってもらう。
やがて、会計になったら、「お勘定、お願いします」や常連なら「大将、美味しかった、ご馳走さま」で通じます。
指で、バッテンを作るのもさりげない方法です。
「ご馳走さま」が、すっきりしていて、お店への感謝の気持ちも入っているので、よいと思います。
すると大将が、奥に向かって「〇〇さん、お愛想ねぇ」と、叫んでくれます。
お寿司屋さんで「〇〇さん」と、呼ばれるようになりたいものです。
間違っても「大将、お愛想」と言ってはいけません。
「お愛想」は、お店のことばです。
6. お寿司屋さんの隠語をやたら使わない
お寿司屋さんは、ある意味、粋を売り物にしているので、様々な隠語を使っています。
例えば、あまりにもポピュラーな「ねた」は、もともとあったことばのようですが、「たね」を逆さに呼んだ隠語です。
「ガーレジください」などと、したり顔で注文している人がいますが、「シャコ→車庫→ガレージ」の隠語は、お寿司屋さんのものです。
知ったかぶりは、どこかでつまずきます。
誰でも知っている「あがり」も、お酒など飲まない人が、最初から「あがりをお願いします」と、言うと、大将は、「お茶お願いね」と、「あがり」とは、言いません。
これは、「あがり」ということばが、花柳界で、最後に出すお茶「上がり花」から来ている隠語だと理解されているからなのです。
「あがり」は、最後に出すお茶、最初から出る訳がありません。
隠語は、お寿司屋さんに返しましょう。